05年〜06年 越年山行
・・ブルーに染まった快晴の聖岳
メンバー ヒロナガCL、ケムタク、プリン 05・12・29〜06・1・1
【29日(快晴)】朝一番の高速バスで新宿を発ち、予定通り午前11時にJR飯田駅に到着。予約しておいた天竜観光タクシーに乗り込んだ。「4駆車はこれしかない」ということで、10人以上は乗れるワンボックスカー(少々年期物)で快適ドライブとなった。途中、対向車が接触寸前で急ハンドルを切って脱輪してしまい、救出に時間をくうというアクシデントはあったものの、上村上町の小野尾集落までは問題なし。その先は出たとこ勝負「行けるとこまで」という約束で、もし積雪で入れなければ3時間の林道歩き、祈るような気持ちで車窓を見つめていた。小野尾集落を過ぎると、やはり積雪も多くなったが、轍もあって何とか行けそうだ。上村上町は飯田市と合併したばかりなのだが、それまではきめ細かな除雪がされていたものが、「節目しかやってくれなくなった」と、ドライバーが嘆いていた。実は、これと同じ嘆きを、昨年、鳳凰三山に行くために夜叉神峠に入るときにもタクシードライバーから聞いた。ここでは芦安村などが合併して南アルプス市になったのだ。このときのドライバーは、「合併でいいことは一つもない」と、怒っていた。
祈りが通じたのか、2時間ほどで無事、便ガ島登山口・聖光小屋に到着した。 ここから、西沢渡までは、ほとんど傾斜のない林道を落ち葉を踏みしめながら歩く。40分ほどで、西沢渡に着いた。渡渉は数b下の沢をわたらなければならない。流れは少ないとはいえ、石の上に雪がかぶっているので滑りそうだ。が、ここには荷物を渡すための手動式ゴンドラ?がかかっていて、ロープを引っ張ることで空中を移動することができる。造りは、しっかりしていて、まだ新しい。 対岸には、すでに4人パーティーが幕営していたが、我々は少しでも高度を稼ぐことにして、沢の水を汲んでから急登にとりついた。40分ほどで、テント一張り分のスペースを見つけて幕営し、前夜祭と称して一杯やってから寝袋に潜り込んだ。 【30日(曇のち雪)】ここからは急登の樹林帯をひたすら登るのみ。「きょうは調子がいい」と高度をどんどん稼いでいたのだが、1700bを越えたぐらいから突然、高度障害が出てしまった。呼吸を速めてもさっぱり空気を吸っている気がしないし、足に力も入らない。朝、出るときは、九州から太平洋側を進んでくる低気圧の影響を考えて、時間が許せば、きょうのうちに登頂してしまおうと打ち合わせていたのだが…。 高度を上げるにつれ雪が舞いだし、森林限界より上は強風が吹き荒れ始めたようだ。猛烈に発達した日本海側の低気圧の影響と思われる。これでは、無理して登頂する意味はないし、私の体調からしても、きょうの登頂はなしにすることにした。もうすぐ、聖平への分岐というところで、頂上から降りてきた単独登山者とすれ違った。風はないもののラッセルが大変だったという。上には、あと4人パーティーがいるらしい。
聖平小屋が右眼下に見えるところまで到達したが、薊畑の分岐がよく判らないし、トレースもないのでそのまま前進した。スノーシューを履いた4人組が降りてきた。単独男性がいっていたパーティーだ。「上は風速20bはある」という。ただ、最後の樹林帯ならビバーグは可能とのこと。それを信じて、聖平には下らず、トレースを頼りにもう少し先に進むことにした。
体が温まると、酒が飲めるほどに体調も回復した。ラジオで天気予報を聞くと、北陸地方から東北、北海道にかけて発達した低気圧が通過中とのこと。現在の悪天は、この影響だと確信した。西から高気圧も張り出してくるので、明日の天候はこの低気圧のスピードしだいだろうが、移動速度が早いので回復するだろうという楽観的な予想を立てた。 【31日(快晴)】 起床後、ケムタクがテントから顔だけ出して見上げると、星が輝いているという。風も弱まっているようだ。「これは行けるぞ」と、全員にんまり。すぐに朝食の準備を始めるが、すでに2500b前後まで到達しているので、そう慌てることもない。 この先のラッセルは、小聖岳への尾根に出るまでのわずかな距離だと、昨日のパーティーに聞いていたので、ワカンは持たずに出発した。ところが、テントを出てわずか数bで、雪との格闘が始まり、30数bでギブアップ。ヒロナガがワカンを取りに戻った。
それにしても、暑い。完全装備で臨んだ上に、風、雲ともなく、厳冬期とは思えない力強い陽光に照らされているのだから当然だろう。
最後の急登に入っても、この状況はまったく変わらず、汗をかきかき牛歩で登った。テン場を出て3時間弱、頂上を踏んだ。そこは、まさに360度の大パノラマ、遮るものは何一つない。ちぎれた雲辺ひとつないのだ。すべてが、ブルーに染まっている。「この時季に、こんなことってあるんだ」と、心の底から底から嬉しさが込みあげてきた。奇跡に近い好天を与えてくれた山の神に感謝!である。
30分ほど頂上でのんびりすごし、下山を始める。天候は崩れる気配まったくなしで、いたって快適である。小聖の尾根からテン場までの下りは、シリセードで遊ぶ。登りは、ズボズボで苦労したが、下りはあっけない。 テントを撤収し、再び下りだすが、昨日のトレースは、ほとんど消えている。それほどの降雪はなかったはずだが…。夏道は確か尾根上にあったが、積雪で歩行困難なので、往路と同じ聖平側のすぐ下の樹林帯部分を進む。登りよりも、もぐりかたは少ないが、それでも油断すると腰まで雪にはまりこんでしまうので気は抜けない。 しばらく行くと、娘と両親のファミリーパーティーと出会う。父親が地形図片手にビバーグ適地を探していたので、我々がビバーグしたところを推薦した。「あと1時間かな」と教えると、顔を赤く上気させた娘さんが「もう動けない」と叫ぶ。ちょうど出会ったところが、少し平になっていたので「ここでいい」と主張している。父親は、「そんな上に風が当たらないところがあるのか」と半信半疑、母親は無言で夫の決断を待っている。父親は地形図とにらめっこして、なかなか結論を出せないでいる。まあ、これ以上は余計なお節介になるので、「明日のことを考えれば、少しでも上の方がいいですよ」と娘さんに声をかけ、別れを告げた。
ケムタクが担ぎ上げた、おせちで乾杯!だがアルコール類が残り少なく、ちょっと寂しい。が、きょう一日の我慢です。 【1日(快晴)】 06年の最初の朝が明けた。きょうも快晴のようだ。きっとあの親子も、素晴らしい頂上を踏むことだろう。 お雑煮の朝食を済ませ、テントをたたみ、最後のビバーグ地を後にした。
聖光小屋には予約しておいた11時より、5分早く到着したが、タクシーはすでに待っていてくれた。今回の山行は、すべてがうまくいく。 飯田駅近くの旅館・三宜亭に運んでもらい、温泉で汗を流す。高速バスの発車まで、どこかで一杯と店を探したが、さすがに元旦は営業していない。仕方がないので、コンビニでつまみや酒類を仕入れて、バスの待合室で静かに打ち上げをやった。それぞれが登頂成功の喜びをかみしめた。 【コースタイム】 29日=新宿7:00〜高速バス〜11:10JR飯田駅〜タクシー〜13:00便ガ島・聖光小屋13:20 〜14:00西沢渡14:20〜14:50ビバーグ(約1200b) 30日=テン場6:48〜13:15ビバーグ(約2500b) 31日=テン場7:40〜9:15小聖岳9:26〜11:12聖岳11:42〜13:00テン場(撤収)13:36 〜14:50ビバーグ(携帯通話可) 1日=テン場8:10〜10:00西沢渡10:15〜10:55便ガ島11:00〜13:00三宜亭(温泉)〜 飯田駅16:00〜20:10新宿
【参考】 ・高速バス・新宿〜飯田駅 4200円(片道) ・タクシー天竜観光タクシー 飯田駅〜便ガ島20520円(片道) |