山笑い急登にあえぐ山梨・高柄山
団塊オジサン 03年4月13日 標高733メートル、山頂でトン汁、中央線からのアプローチが容易――。4月の会山行「山梨百名山・高柄山(たかつかやま)」は、そんな予備知識からスニーカーの軽装で参加したが、なかなかどうして急登・急下降の連続で、下半身の筋肉は酷使、呼吸は「乱れそめにし我ならなくに」の立派な体育会系のハイキングだった。それでも天気予報通り快晴の甲斐路は、木々は芽吹き、ミツバツツジ、白木蓮、蓮華草、ソメイヨシノなど春の花がいっせいに咲き乱れ、この季節の俳句の季語「山笑う」を文字通り実感できた。 JR中央線・上野原駅を降り立った多数のハイカーはほとんどが生藤山、笹尾根方面へのバス停に向かい、高柄山方向にあたる駅南口に出たのは我がパーティー(男6・女11)のみ。駅南口は1本の狭い舗装道路が通じているだけの1軒の商店すらない「うらぶれた駅裏」という印象。夕暮れ時ならば「屋台の赤提灯、コップ酒、そぼ降る小雨に打たれる子犬」が似合いそうな風情。いやいや朝っぱらから「居酒屋兆治」の世界ではない。「時は春、日は朝(あした)」なのだ。各自が持参したトン汁用食材と調理器具を手早く再配分、先発・後発隊に分かれて出発したのが午前8時半。桂川の河岸段丘に咲く満開のソメイヨシノを遠くに眺めながら橋を渡り、程なく山道に入る。Kリーダーの弁によると「コースはJR四方津駅からの方は傾斜はなだらかだが、上野原駅側からの入山だと結構、侮れないコース」とのこと。それでも標高700M台とタカをくくっていたオジサンは、最初のピーク鶴屋御前山を過ぎた急下降あたりから足回りがスニーカーということもあってスリップ・転倒の不安すら覚えた。加えて目的地の高柄山頂上までは幾つものピークを越える上下移動のかなり激しい山道。道幅も結構狭く、転倒すれば急斜面を重力の法則に素直に従う結果を招くであろうことを思うと勢い慎重に歩く。 東屋のある新矢野根峠での休憩をはさみ3時間足らずで高柄山山頂に到着。山頂には先客10人余りが昼食をとっていた。南には丹沢山塊、北方には奥多摩の山並みが映え。1週前に降った名残雪をうっすらと山腹にとどめている。眼下には桂川の川面が光り相模湖に注ぐ、のどかな春の田園風景。まず先発隊7人がビールで乾杯。早速、トン汁の準備にとりかかる。この間、K沢さんからの秘伝の「春キャベツとイカの塩和え」はじめ季節の惣菜、冷えたビールの差し入れ。いつも賑やかに話題を振りまくTさんは、山頂につくと女性ハイカーから銀座のママかと思わせる変身ぶり、購入したての大型ザックから色々な酒を取り出し皆に勧める。なんでも次回からはワインリストも持参するそうな。そうこうするうちに後発隊10人が到着、M野お父様からは清酒「辛口一献」も頂き、山の上とも思えぬ旬のお惣菜とお酒。メーンのトン汁は具沢山でミツバで緑のアクセントをつけ、味噌味も汗をかいた体には辛くもなく甘くもなくの抜群の味付け。17人全員がおいしくお相伴に預かり、おまけに集合写真は山頂で一緒になった朝日新聞写真部の方に撮影していただいた。うららかな春の日差しに包まれた山頂では2時間近くがあっという間に過ぎる。 下山は新大地峠を経由してJR四方津駅へ。月並みだが春の草花が「今が盛り」と一斉に咲き誇り、植物に詳しいOさんからは、見るのも聞くのも初めての「春蘭(しゅんらん)」の可憐な花を教えていただいた。いつしか午前の急登の苦しさも忘れ去り、「山笑う」情景にはキャンディーズばりの「微笑み返し」で応える女性陣。山ろくの農家の庭先には、今年男の子が誕生したのだろうか、早々と鯉幟が春風になびいていた。低山ながらも登りごたえがあり、季節の花、眺望に恵まれた個性的な山でした。それにしてもKリーダー、今日の急登に、いささかも動じることなく一定の歩行で、ピタリと計画書通りの午後3時に下山。その後ろ姿を拝見して、かつて「男の背中」という演歌がありましたが、負けず劣らず「姐御の背中」も頼もしく感じさせるハイクでした。 |