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粗忽者の山歩き−プロローグ 団塊オジサン(もちろん仮名です) 「話を聞かない男、地図が読めない女」という単行本が少し前にベストセラーになった−−。男女間の脳の構造上の違いを解説したノンフィクションだが、この「話を聞かない、地図を読め(ま)ない」という性格に輪をかけて「思い込みが人一倍激しい」という中高年のオジサンが、どういう訳かホームページで見つけた東京・練馬区の「石神井山の会」に加入、9月の初旬、奥武蔵野のハイキング銀座と呼ばれる伊豆が岳に出かけることになった。 往路の西武電車では先輩会員のKさん、私と同じ新入会員でSさん、Tさんと同一ボックスとなり道すがら、それぞれが自らの山行体験を披瀝されるのを拝聴させて頂いた。魔の山といわれる谷川岳での雪上訓練での話、槍、穂高、立山などわが国有数のコースを数多く走破された苦労話など、小生には感服と驚嘆に値する話題ばかり。同じ新人でありながらSさんなんかは、まるで著名登山家か一流の女性アルピニストに思えてきた。それに引き換えオジサンは「るるぶ 首都圏からのハイキング」を片手に、1年前くらいから歩き初め、今年7月に富士山に登り、生まれて初めて山小屋に泊まったという程度の経験しか持ち合わせていない。隣席のTさんも、教科書は「るるぶ」と聞いて同レベルの人が居たと少し安心、電車が入間川の鉄橋を越えたあたりから山の話題からはリタイアし、居眠りを決め込む。 午前9時前に目的地の正丸駅着。4人の先発隊が先行出発し、昼食時にトン汁で私ども新人会員を歓待して頂けるとのこと。日本の指導者たちも、この労を惜しまぬ「石神井山の会」リーダー方の骨太の心意気があれば、未曾有の経済危機から速やかに脱出できるのに、と訳の分からぬことを連想しながら山頂へ歩を進める。 伊豆が岳のコースは、せせらぎ、急登、旧跡「子の権現」と、心地よい疲れを感じさせてくれる距離、天候にも恵まれ新人ハイカーにはこの上ないコース。選定されたSリーダーには背中の缶ビールと合わせ多々感謝。2時間足らずで頂上につき眺望にも恵まれたが、オジサンは美しい山並みの名称どころか東西南北すらも分からない。山道でも、可憐な秋の花を見つけてもほとんど名前を知らない。事前の例会で拝見させて頂いた会報「かたくり」では、美しい自然の情景、四季の移ろいを、鋭い観察眼と巧みな文章で表現される先輩会員諸氏の才能の豊かさに改めて感銘させられる。山をやられる方は自然の偉大さ恐ろしさを知る一方で、その美しさも最大限に受け止められているのだと思う。考えてみればこの二十数年、神田の呑み屋とジャン荘と会社のゴールデントライアングル以外は行ったことがないオジサンとって、先輩諸氏に追いつくにはいささか時間がかかりそうだ。 午後3時半、参加者23人が無事下山し西吾野駅に到着。帰着駅の石神井駅前の居酒屋での反省会。反省はしないが反省会が好きというオジサンは、ようやくわが場所を得たりとばかり、今日初めて山行させて頂いた仲間と酒を酌み交わす。どうやら「石神井山の会」の皆さんはアルコールの方も造詣が深い(?)ようで、一人勝手に連帯感を抱く心境になった。初山行の会員が感想を述べるに当たって、酒が入ると怖いもの知らずのオジサンは「今回の山行記は私が書きます」と見栄を張ってみたものの、いざパソコンを前にすると思うように、キーボードが進まない。それもこれも美文・名文家揃いの先輩会員諸氏手作りの「かたくり」を拝見したからでしょう。 ま、いいか。会のしんがりに付いていって1年後くらいに「ハイキングとピクニックの違いが分かるオジサンになれれば」と一人ごちた 。 |