初の岩トレ(40才から始めるクライミング・わかりやすい話編)

 新人会員 K・Kさん

「今、帰ったぜ」

「おかえり。早かったね。」

「おう。お茶淹れてくれ。」

「どうだった?今日は?」

「うん。今日は区の交流ハイクってことでな、天覧山行ってきた。」

「飯能の天覧山? 道理で早かったんだね。 区の交流って?」

「練馬区にゃあうちも含めて5つの会があってな、年に何回かは交流を持とうじゃねえかって

 趣旨らしい。 で、今日は岩登り講習会と怪我人の応急・搬出講習会があったんだ。」

「へええ。 で、アンタはどっち?」

「俺ぁ、岩よ。」

「イバることないじゃない。 平成13年8月の定例会で入会した初心者なんだから。」

「やけに細かい指摘するね、オマエは。 けどまあ、そうだな。 その後、9月2日のウェルカムハイクの伊豆が岳、9月15〜16日の北八ヶ岳、9月22〜24日の白峰三山縦走、10月14日の蕨山ハイキング、で今日10月20日(土)区連交流ハイキングだもんなあ。 ま、確かに初心者だわな。」

「アンタもえらく細かく説明するわね。 今までの分をここで済ませちゃおうって感じねえ。」

「まあ、いいじゃねえか。」

「今日はたくさん人来たの?」

「急かすなよ。 お茶くらい飲ませなよ。 順に話すからよ。」

「じゃあ、聞こうか。」

「あれ、腕組みして胡座かくこたぁねえじゃねえか。 今朝8時に飯能駅に集合って事でな、行ってみると結構人がいるんだ。 30人くらいいたかなあ?」

「石神井山の会からは?」

「うん。俺を含めて6人だったね。」

「みんな岩登り?」

「いやいや、会長のOさんとWさんは怪我人搬出講習の方だったな。Oさんは講師だったし。俺と事務局長のNさんと女性のOさんと、あと入ったばかりのTさんが岩だったね。」

「岩山って、すごい山?」

「なんのなんの。俺が手を伸ばせば届いちゃうくらいのもんよ。」

「ウソつきなさいっ」

「下から見ると大したこたぁ無ぇように見えるんだよ。」

「上から見ると?」

「気持〜ち、怖いような気がしないことも無いような気がする今日この頃。」

「意味わかんないわよ。怖いんでしょっ?」

「怖かぁ無ぇんだよ。 ちょっと足がすくむだけ。」

「それでも登れるもんなの?」

「当たり前よ。ちゃ〜んと講師がいるんだぜぇ。 教え方もうまいもんだ。」

「アンタがイバることじゃないでしょ。 じゃ、みんな登れたの?」

「うん。年配の女性の人もみんな登れたね。 経験者組と初心者組とで分かれて始めたんだけど、うまい教え方するね、講師の人は。」

「どんな?」

「岩に登るって気持ちじゃ無く、岩と遊ぶ、岩に戯れるって気持ちでいいんです。だって。」

「意味わかってんの?」

「ん? 気を楽にってことだろ?」

「ちょっと違うんじゃない? 最初っから登るの?」

「いや、最初は低いところを横ばいに。こりゃ簡単。怖くない。すぐ足着けるし。」

「それじゃ練習にならないでしょっ。」

「それからビレイしてもらって、いよいよ上に。 ビレイって知ってっか? 唐揚げや煮付けじゃねえぞ。」

「なに、それ?」

「左ヒラメの右ビレイ。」

「そりゃカレイ! ビレイって確保のことでしょ? ハーネスってベルトみたいなの着けて上から降りてきているロープに結びつけてもらって落ちないようにするんでしょ?」

「オマエ詳しいなあ。手間省けていいや。そのロープが頂上で折り返してあって反対側を講師の人が持っててくれるんだな。落っこちそうになると引っ張ってくれるんだわな。」

「じゃあ、落ちないんだね。」

「ああ。素人が考えるほど危なくは無いわな。でも素人じゃ登れない。」

「当たり前じゃない。」

「で、初心者組は全員登れちゃったので経験者組の岩の方へ行かせてもらった。こっちはすごい。」

「どうすごいの?」

「オーバーハングって言ってな、岩が、こう、張り出してんの。」

「そんなすごいの?」

「うん。うちの事務長だってその下までたどり着いたらすぐ、テンション!って叫んじゃうくらい。」

「アンタ怒られるよ」

「でもあとでちゃんと登りきってたよ。さすがだね。」

「アンタは?」

「楽しみを残しておくのが通ってもんよ…。」

「登れなかったのね。」

「いつかは登るよ。」

「初参加のTさんだって登りきったじゃない。」

「なんでオマエ知ってるんだよー。」

「ハァ〜ッ、情け無い。」

「で、それから飯能河原へみんなで行って、今度は芋煮会。」

「それはいいわね。でも知らない人ほとんでしょ? アンタ人見知りするし。平気だった?」

「それがみんないい人でなあ。話し掛けてくれるんだよ。気さくな感じで。」

「良かったね。」

「うん。山やってるってだけで、つながりというか親近感というか。いいよなあ、山って。」

「ふ〜ん。」

「河原でやってるのに山を感じるんだぜえ。 ああ、詩人だなあ、俺って。」

「なに言ってるの。」

「で、夕方になったのでそこで解散。あとは電車に乗って帰ってきた。面白い一日だったね。さ、ご飯にしてくれ。」

「それだけ?」

「それだけだよ。」

「なんか話が尻つぼみというか、『おいらは登山靴』みたいなオチは無いの?」

「オチなんか無えよ。今日は岩登りだぜぇ。 岩登りだけに…オチちゃあいけねえ。」

                     

 おあとがよろしいようで

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