喫煙山行、木曽駒から宝剣・空木岳を縦走
| 03年10月11−13日団塊オジサン 「千代田区、歩行喫煙に罰金制度」(3月)、「首都圏私鉄各社、構内を全面禁煙に」(5月)、「JT、たばこ1本1円の値上げ」(7月)――。これらは今年実施された「たばこ」にまつわる諸施策である。わが山の会でも愛煙家は極々少数派。山道での休憩では、風下に身を置き冷ややかな視線に耐えながら、ひっそりと紫煙をくゆらすという肩身の狭い思いを身に染みて感じる今日このごろである。「空気の澄んだ山頂で心置きなくタバコを吸おう」、そんなささやかな願いから、愛煙家3人での喫煙山行企画が持ち上がった。山域は中央アルプス北部の木曽駒ケ岳(2958M)から宝剣岳(2931M)を経て空木岳(2869M)へ抜ける本格縦走コース。メンバーは樹林帯大好きのOTさん、岩稜愛好家のMさん。百名山目標のオジサンが最長喫煙暦(愛用銘柄はいまだに「わかば」)ということでリーダー役に。技量は未熟、情緒不安定、協調性に欠くオジサンがリーダー役とあって、不安を抱えての喫煙山行スタートとなった。 木曽駒ケ岳は、大正2年8月に児童9人教師1人が山頂近くで疲労凍死した事故を取り上げた新田次郎の小説「聖職の碑」の舞台だが、今では標高2611Mの千畳敷までロープウエーで上がれる大観光地。今が盛りの紅葉に加え3連休とあってしらび平駅は長蛇の列。それでもゴンドラから見る渓谷の連瀑と紅葉は見事で2時間半待ちの苦行をいくばくかは救ってくれた。 夕空に浮かぶ槍ケ岳を眺め一服 千畳敷出発が16時15分。普通なら行動終了の時間だが、翌日の天候と予定を考えて一気に山頂を目指す。久しぶりの3000M級に加えて出だしの飛ばし過ぎで、オジサンはスタート30分の八丁坂でバテ気味。この時点でリーダー役は山行計画書作成までと自覚し、以降はOTさん・Mさんの連立内閣に託す。乗越浄土、中岳を大急ぎで通過、山頂直下の頂上山荘にザックをデポし、なんとか薄暮のうちに木曾駒ケ岳山頂が踏めた。さすがに我がパーティーが山頂最終組のようだ。槍・穂高、乗鞍、白馬三山の北アルプス、伊那谷を隔てて南北に長い南アルプスの山容が赤みがかった夕空にくっきりと浮かび、ゆったりと3人で紫煙をくゆらす。思わず出た言葉は「景色は綺麗だ、タバコがうまい」。早々と小屋に戻り食事の準備。OTさんお手製の海老ちりに日本酒で乾杯。宿舎を急きょ変更したことで不愉快な激込みも回避でき、まずは初日の喫煙山行は成功。小屋内で情報収集すると木曾駒は、西日本からの客は木曽福島側からの古典的ルートを使い、首都圏・関東勢がRW利用の楽な登り方が多いようだ。 難所越えで一服、ピークで一服、コーヒータイムで一服 2日目朝はコーヒーとMさん手作りのフランス風サンドイッチを頂き5時50分出発。小雨だが予定通り6つの主峰を越えて空木岳手前の木曾殿小屋を目指す。最初のピークはコース最大の難所といわれる宝剣岳。岩塊累々の威風堂々としたピークだが、鎖・ステップが整備してあり、南稜下りの大岩のトンネルも難なく通過でき記念写真と一服。時折、木曽側からの風雨にあおられながら、極楽平、島田娘、濁沢大峰を経て中間地点の桧尾岳に到着。このあたりからオジサンのペースが落ち始めた。岩稜帯大好きのMさんの足取りは軽い。間に立つOTさんは前後に気を配りながら力強いステップで歩を進める。さすがに年間入山日数が100日を軽く越すという健脚ぶりだ。桧尾岳頂上は小広いスペースがありコーヒータイムとする。ここから熊沢岳にかけてが、宝剣岳以上に手ごわい核心部だった。 かなりのアップダウンがあるうえ、ホールドの少ない1枚岩の登攀、岩だな(バンド)のトラバース、いずれも一歩足を滑らせれば奈落の底という肝を冷やす場面。先を行くOTさんが自らの荷物を置いて「心配だから」と後戻りしてくれたので、素直に好意に甘えザックを預け空身で難所を通過した。この間はコースタイムを30分オーバー。巻き道もないことから多分、単独行なら相当な時間を要しただろう。本日の最後のピーク東川岳を過ぎ木曾殿山荘到着が14時25分。時間的には、もう一つ先へ進めるが無理をせず、予定通り木曾殿山荘で泊まる。朝からの降雨にもかかわらず、山荘には夕方遅くまで雨具をつけた登山客が続き、最終的には布団2枚に3人の込み具合だった。ジャーマン・ポテトで晩餐会。早めに床についたが、夜半には強風で小屋が揺れるほどだった。 強風にもめげず一服、空木岳へ 第3日は4時30分起床。前日からの雨に加え前線通過で強風が吹き荒れる。小屋主さんによると前線は9時ごろに中央アルプスあたりに達するという。空木岳を越えて伊那側の樹林帯に入り込めば風の影響は少ないとの説明で、しばらく天候の様子をみて5時50分出発。3000M近い稜線での強風は初体験なうえ、標高差400Mのガレ場の登りはやはり難渋した。後続のMさんは強風で完全に身体が浮き上がったと恐怖心を露わに語る。風雨はタバコにも大敵だが、第一ピークの岩陰に隠れて一服。ほんの瞬間、西の空に青空が見えたが束の間のできごと。第2ピークを越え縦走最後のピーク、空木岳山頂に7時25分にようやく立てた。握手を交わす3人の手にぬくもりが伝わる。そして、やっぱり一服。 後は標高差2000Mを下るのみ。樹林帯に入ると風はピタリとやむが、雨は相変わらず続く。下山コースの池山尾根は途中、迷い尾根、大地獄、小地獄と恐ろしそうな名前の箇所があるが、はしご、鎖などで整備も行き届いており、慎重に下れば大丈夫。樹林帯に入ってOTさんの表情もなごむ。山頂近くは花崗岩とハイマツが美しく、空木平分岐を過ぎたあたりからは美しい紅葉・黄葉の木々に包まれて下山を急ぐ。1000Mばかり下った池山避難小屋に入ると、一段と雨脚が強くなり雷も鳴り始めた。今が前線の通過のピークなのだろう。もう、ここまでくれば大丈夫、長めの休憩を取り12時15分に無事、池山登山口に降り立つことができた。予約のタクシーで行った駒ヶ根高原「こまくさの湯」で身奇麗にし、雲が切れた南アルプスの山容を車窓から眺めながら中央フリーウエーを走り抜けた。 単独行が比較的多い個性派の3人。天候不順で展望には恵まれなかったが、ハイマツと岩稜帯の縦走コースは気に入っていただいたようで、「計画書作成までがリーダー役」のオジサンも正直ほっとした。また、木曽殿山荘で同宿となった京都からの若夫婦には、早々と当会HPに訪問いただき、掲示板に書き込んでもらえた。かつて某随筆家が「高速道とコンビニが登山を変えた」と形容したが、今はIT化が登山の態様を変えつつある時代なのだろう。 コースタイム <11日=晴れ>新宿BT0700(高速バス)−1140駒ヶ根BT1200−1251しらび平1550(RW=待ち時間2時間30分)−千畳敷1615−浄土乗越1655−中岳―木曽駒山頂1705−木曽駒山頂小屋1730(泊) <12日=雨>山頂小屋0550−0630宝剣岳0640−極楽平0712−島田娘−濁沢大峰0835−桧尾岳1012−熊沢岳1230−東川岳1400−木曽殿山荘1425(泊) <13日=雨・強風>山荘0550−空木岳山頂0725−駒峰ヒュッテ0735−空木平分岐0817−迷尾根0918−大地獄・小地獄―池山避難小屋1100−池山登山口1215(タクシー)―こまくさの湯1300−駒ヶ根市1500(バス)−新宿BT2025 |