「神々の田園」に天女舞う苗場山

                     団塊オジサン

02年8月24−25日

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 石神井山の会ハイキング部発足の大型企画第2弾として、1泊2日で上越の苗場山(なえばさん、2145M)が催された。苗場山は4キロ四方の広大な山頂湿原を抱き、池塘群に生育する植物が神の植えた苗代にも見えることから、この湿原を「神々の田圃」と呼び、「深田百名山」「花の百名山」にも数えられている。さて、オジサンの「苗場」のイメージは、70年代のスキーブームのころ、ユーミン(荒井由実=松任谷由実)の音楽を聴きながらゲレンデを滑り降り、山ろくのプリンスホテル・ツインタワーに宿泊するというトレンディーな青春時代を送っていた、と言いたいところだが、実のところは、その先の石打スキー場でむくつけき男どもと民宿に泊まり、安酒をあおっていたというのが、わが青春時代。でも、その不遇な青春時代に味わえなかった体験を、今回の苗場山山行では満喫できた。

「天女の誘惑とY仙人」

 24日の登頂はSさんはじめ美人3姉妹(?)が先発隊として一足先に出発。後発隊の男性5人、女性5人はJR越後湯沢駅から車に分譲し、神楽スキー場ゲレンデにある和田小屋前から出発した。雲行きは芳しくなかったが、リーダーのOさんは8月初旬に下見登山をし、山行前夜から「雨よ降るな」と念じ続けたという。こうした気配りに感銘したY氏はOさんを「天女」と呼ぶ。Y氏は神奈川の山荘で俗世間を避け、臨書にいそしむ仙人のような毎日を送っているという話だが、O天女に手招きされたからたまらない、長躯、山荘からワゴン車を飛ばし苗場山に駆け付けた。天女の魅力が勝ったのか、仙人の修行が足りないのか知る由もないが、りんどう、トリカブトなど秋の花に励まされて一行は華やいだ気分で頂上を目指す。途中、中の芝で食事休憩、振り返ると今まで雲に隠れていた上越国境の谷川岳が突然、姿を現す。

広大な山頂湿原に驚く

 水場のある雷清水を過ぎるあたりまでは、木道も整備され比較的なだらかな歩きやすい登山道だが、山頂直下は結構な急登。途中、出会った下山者からは、先発隊から「順調に頂上を目指している」との伝言を何度か受け取った。そう、我が会員はたとえ離れていても心が通い合う以心伝心のチームワークなのです。

 急登を越え、山頂に着くと、広大な湿原に一同、驚嘆の声をあげる。登り途中で見た山容からは想像すらできないほどの、美しく広々とした湿原で、尾瀬と違って観光客が少ないのがまたいい。先発隊の美人3姉妹がにぎやかに迎えてくれた山頂ヒュッテに荷物を預け、1時間半ばかり山頂湿原を逍遥。時折、初秋の日差しが雲間から顔を出し、はたまた、しっとりとした霧が湿原を覆う、雲の切れ間からは北信の山々も見渡せる。草紅葉の季節には少し早いが、一同「来てよかった」「花の盛りに再度訪れたい」と大満足の様子。

山頂ヒュッテに至福の時が流れる

 湿原逍遥の後は山頂ヒュッテ前のテラスで、暮れなずむ「神々の田圃」を眺めながらのささやかなパーティー。それぞれが持ち寄った酒や料理で、素晴らしい自然と、一同無事、山頂到着に感謝。料理の圧巻はKさんが、山頂でこしらえてくれたカナッペ。クッキーにクリームチーズ、シラス、わけぎを和えて乗せたものだが、味は抜群、また、Kさんの調理の手際よさにも、毎度のことながら下を巻いた。きっと帝國ホテルのフルコースに出るオードブルに供しても引けはとらないほどの出来栄え、とオジサンには思えた。呑むほどに酔うほどに話も弾み宴は尽きないが、今夜は小屋泊まりとあって、夕食のため小屋に戻る。夏休み中の土曜日だったが、宿泊客は20人ばかりで、ゆったりと寝場所を確保できた。また、夕食も山小屋定番のカレーライスではなく、シンプルながらも鶏肉の唐揚げ、サラダ、山菜、お漬物などのバイキング方式にちょっぴり満足。ここでも食後の酒盛りは続く。夜の帳が下りたころに外に出てみると満点の星、北斗七星、天の川など天文ショーを満喫できた。

 翌朝、再び山頂湿原を逍遥し、わずか1日で別れを告げねばならない素晴らしい自然の創造物に感謝し、一路下山路へ。下山は再び和田小屋をめざす。途中、山頂直下の急な下りが心配だったが、これといったトラブルもなく、正午過ぎに和田小屋に到着。車に分乗しJR越後湯沢駅へ。康成の小説「雪国」で名高い湯沢の湯で心地よい疲れと汗を流した。新幹線往復、小屋泊まり、この世のものとも思えぬ山頂湿原、心のこもった手料理と、夜行バスをよく利用する単独行オジサンにとってはまさに「大名登山」だった。次回はY氏のついでにオジサンにも「天女の手招き」をお願いします。

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