難行苦行の北ア表銀座

         槍ヶ岳は展望ゼロ

  04年7月16日夜−19日 団塊オジサン

「海の日」の連休、当初、飯豊連峰縦走を考えていたが、新潟・福島地方の豪雨で急きょ計画を変更し、北アルプス・常念岳から大天井岳、東鎌尾根経由で槍ケ岳を登頂、上高地に下山する計画に切り替えた。梅雨明け十日に加え、表銀座コースとあって混雑の少ない山小屋を選びコースを組み立てたが、最大の目的はやはり槍ケ岳(3180M)登頂。

17日=雨、強風。行動時間8時間>

前夜、お世辞にも爽やかとはいえない夜行バス「さわやか信州号」で熱帯夜の新宿を立つ。穂高神社バス停からは相乗りタクシーで一の沢の登山口へ。下車するなり雨足が強まり雨具を身につけ6時40分スタート。一の沢沿いの樹林コースを淡々と登る。途中、蝶ケ岳ヒュッテの若い従業員との同行となるが、早い歩行ペースにはついて行けない。胸突き八丁の急登を越え、最後の水場で2度目の休憩、常念乗越にある常念小屋到着が10時25分。当初計画の常念岳山頂往復は悪天候で展望なしとの判断からパス、小屋でコーヒータイムをとり今日の目的地、大天井(おてんしょう)岳へ急ぐ。

ここからが雨と強風との戦い。大半の登山者は蝶ケ岳、燕岳など次の行程を断念し下山ないしは小屋泊のようだった。雨交じりの強風の中を出発、横通岳を過ぎたあたりから風が一段と強まる。下界に見える安曇野や松本平は晴天のようだ。ルートは標高こそ2700−2800Mと高いが難路ではなく槍・穂高の展望コース。だが槍沢側から吹き上げる風で雨具に打ち付ける雨が突き刺すように痛い。時には耐風姿勢をとり、時には岩陰に身を隠し風が弱まるのを待って歩く。地図を広げるのも容易ではない。中大天井手前あたりでは、強風でさすがに一人では不安になり、後続の神戸から来たというご夫婦を待って同行を願う。表銀座コースとはいえ逆方向からの人と出会ったのは3組のみ。ガスの中を小屋の揚水用ホースを発見して一安心、大天荘には14時35分に到着。

大天荘は穂高町営で燕山荘が運営を受託、「山小屋は接客業」という教育が行き届いており従業員の細やかな気遣いが感じられ、夕食も肉系か魚系かチョイスできる。乾燥室があるのもありがたい。数組のテント設営者も悪天で全員が夕暮れ過ぎには小屋に避難した様子。ここは北鎌尾根攻略の基地らしくヘルメットにザイル装備の客も見受けられたが、悪天で北鎌へ向かったパーティーはいないようだ。

<18日=朝方雨・強風のち晴れ間も。行動時間10時間15分>

午前6時に大天荘出発。相変わらずの風雨だが午後からの天候回復予報に期待。歩行45分の大天井ヒュッテで東鎌尾根の情報を仕入れる。このルートは例年7月中旬までは残雪でアイゼン、ピッケル必携とのことだが、今年は雪解けが早く夏道が出ていることを確認。まず喜作新道を経て西岳を目指す。ビックリ平、赤岩岳を経て西岳ヒュッテでコーヒータイム。ほんの瞬間、朝日を浴びる常念岳が拝め、今回の山旅で唯一の晴れ間。西岳から水俣乗越にかけては、やせ尾根、はしご、鎖場が連続し急な登下降もあり北ア入門コースとはいえ結構ハード。水俣乗越で雨具を脱ぎ昼食休憩。昨日から同一コースを前後して歩く60歳代後半(推測)の男性単独行者と会話を交わすと、「横尾から蝶ケ岳、常念岳、大天井岳、槍ヶ岳、大キレットを経て奥穂高岳から下山」という計画。いでたちはスニーカーに100円ショップのビニール合羽、こうもり傘を腰に差し、スーパーのレジ袋に飲料と食料を入れ小屋泊まりという究極の軽量化装備。彼のキャリアは不明だが、仮に事故を起こせばマスコミや山岳関係者は「中高年の無謀登山」「山を甘く見るな」と非難の嵐だろうが、本人にしてみれば「どういう登り方をしようが俺の勝手、責任は自分で持つ」という自信が会話の雰囲気からうかがえた。

天狗の腰掛や独標など岩峰鋭い北鎌尾根を眺めながら、東鎌尾根のフィナーレは岩稜歩きで14時半に槍岳山荘到着。小屋付近は猛烈な風だが山頂は大丈夫という小屋従業員の情報から、一息入れて空身で槍の穂先へ。天候のせいで登路の渋滞はなく山頂も10人未満だが残念ながら展望はゼロ。早々に下山したがさすがに緊張でのどが渇いた。記念バッジを購入し200Mほど下の殺生ヒュッテに下る。殺生への下山路では何人もの人に出会うが、精魂尽き果てた形相の人が多く、きっと上高地から一気に肩の小屋を目指し翌朝のご来光に備えるつもりなのだろう。翌朝の好天を祈念した。殺生ヒュッテでの寝場所は3人分のスペースが確保できゆったり就寝できた。北アルプスでの小屋泊まりは初めてだが、空いていたこともあり好印象が持てた。宿泊客への対応が丁寧で、バンダナを巻いた若い女性従業員も多く、リピーター客確保のための市場原理が健全に機能していると思う。これも北アルプスという「ブランド」によるものだろうか。

<19日=雨のち曇り。行動時間7時間>

未明に小屋内で中年女性が階段から転落、打撲で自力歩行困難となりヘリ下山というハプニングがあった。これも統計上は山岳事故?。殺生ヒュッテ出発は6時15分。上高地に下山するのみで悪天候は気にならない。ただ長丁場なので膝を痛めないようゆっくりと歩く。徳沢園でソフトクリームを食し、途中3回の休憩を交え河童橋到着は13時15分。周辺はバスツアーの観光客でかなりの人ごみ。梓川沿いにある村営の上高地アルペンホテルに立ち寄り入浴(500円)、3日間の汗を流す。帰路は中央道・中央線の混雑を避け、JR長野駅行き直通バスに乗り長野新幹線で帰宅。長野駅前のお勧めの店は駅西口高架下にある「駅前食堂」。昨秋の高妻山の下山後に見つけた店で、一皿ごとに好みの惣菜を選ぶ古典的な定食屋だがメニューは豊富で割安かつ店内も綺麗。「真澄」などの地酒もある。従業員も楚々とした女子高生風のアルバイト(茶髪、ガングロではない)。とかく無個性で客筋の悪い居酒屋チェーンよりも個人商店を応援したい気にさせる店だ。

<コースタイム=休憩含む>

17日=一の沢登山口0640−最後の水場0935−常念乗越1025−常念小屋1030/1115−横通岳−東大天井岳−中大天井岳−大天荘1435(泊)

18日=大天荘0600−大天井ヒュッテ0645−ビックリ平−赤岩岳手前0800−西岳ヒュッテ0915−水俣乗越1035/1125−ヒュッテ大槍1325―槍岳山荘1433−槍ケ岳山頂1510−殺生ヒュッテ1615(泊)

19日=殺生ヒュッテ0615−槍沢ロッジ0840−横尾1015−徳沢園−河童橋1315−上高地アルペンホテル(入浴)−JR長野−大宮

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