草紅葉に染まる涸沢カール、
        サクッと奥穂高岳登頂

                      06年9月23−25日  団塊オジサン

雲海に沈む夕陽と笠ケ岳のシルエット

北アルプス・奥穂高岳(3190M)登頂は当初、「深田百名山」のファイナルにと思い「上高地帝国ホテルで大パーティー」も考えていたが、諸般の事情で北海道の3座(トムラウシ岳、幌尻岳、後方羊蹄山)を来年以降に先延ばしせざるを得なくなった。そこで奥穂高岳を先行して2泊3日でサクッと登ることにした。幸い週末の天候は台風14号が東にそれ3日間とも松本地方は快晴予報。サクッと登るには荷物の軽量化が一番で、ある人に言わせると3時間も歩けば山小屋がある北アルプス南部では「軽量化には1万円札が最も有効」との説に異論を唱える気はないが「赤貧洗うが如し」の日常では、くだんの軽量化理論も簡単には実行できない。9月も下旬とあって防寒の準備も必要でザック重量をなんとか12キロに抑えた。今回の山行コンセプトは「サクッと奥穂高岳登頂」でもあり、この山行記もシンプルに綴っておこう。

紺碧の秋空と涸沢カール

 初日の23日はJR特急、バスを乗り継ぎ昼過ぎに上高地到着。紅葉前の端境期とは言え相変わらずの人出。登山届を提出し横尾へ向けて歩き出す。途中、明神池で昼食を取っていると、リズミカルなWストックで青年が下ってくる。顔に見覚えがあるが名前が思い出せない。「オイ、オイ」と声を掛けると一瞬、怪訝な表情だった青年もオジサンのことが分かった様子。なんと「石神井山の会の星、T青年」ではないか。聞くと「月遅れの夏休みで燕岳から常念、蝶ケ岳を単独縦走して下山途中」だという。縦走達成をねぎらいザックの「キリン氷結」を1本手渡し、さらに350gを軽量化。15分ばかり情報交換し青年のエネルギーを貰うことができた。

奥穂高岳から望む槍ケ岳

 初日は横尾山荘に宿泊。ジェットバスがあり寝る所もカーテンで仕切ったカプセルホテル並みのスペース。「山小屋離れした山小屋」とのキャッチフレーズも資材を車で搬入できる地の利ゆえか。2日目も6時過ぎにノンビリ出発。涸沢ヒュッテのテラスで1時間のコーヒータイムを取り、紺碧の秋空に映える雄大な涸沢カールの草紅葉を楽しむ。パノラマコースの雪渓を巻きザイテングラード(支稜の意)取り付きで1時間の昼食タイム。赤くなり始めたナナカマドの実を眺めながら穂高岳山荘が位置する白出のコル到着が13時。北東方向は妙高・火打岳の北信の山、正面は常念・蝶ケ岳、その後ろに美ケ原、霧が峰、南東には富士山・南アルプス、小屋裏手の西に目を転ずれば笠ケ岳がピラミダルな勇姿を見せ、1月前に登頂した加賀白山もはっきりと見渡せる。3000メートルの稜線上の午後をビールを飲みゆっくり昼寝。西穂−奥穂の縦走だろう、ヘルメット装着で山頂から降りてくる人も多く拍手が沸く。なかには11時間を要したという女性3人パーティーもいた。夕食後は穂高連峰の空撮ビデオと穂高岳山荘創立80周年のビデオを鑑賞した。150キロの材木を麓からボッカした珍しい白黒の映像も見ることが出来た。同山荘社長の今田英雄氏によると「風雨に打ちひしがれ疲労困憊でたどり着く登山者に、いかに快適に過ごしてもらえるかが山小屋の使命」「天気がよい時は穂高の自然を思い切り戸外で楽しんで欲しい」というのが経営コンセプトとか。

奥穂高岳山頂にて

 3日目が「サクッと山行」の核心部、長丁場と岩稜帯だ。小屋から山頂まで標高差200メートル足らずだがハシゴ、鎖が続く登りで寝起きの体にはこたえる。7時に山頂到着、証拠写真を撮る。月曜日だが九州や広島、新潟からのツアー登山客も多く、さすが全国区の山だ。ジャンダルム(衛兵の意)から西穂に向かう人も少なからずいた。360度の展望を楽しみ吊り尾根を経て岳沢・上高地方向へ下山。かつて今田重太郎氏が娘を寝かせて登山道を切り開いたという紀美子平やカモシカの立場で短い休憩を交えて一気に岳沢に下った。岳沢ヒュッテは今冬の雪崩で完全崩壊し、おまけに小屋の主も交通事故で亡くなったという。妹さんが事業を継承するらしいが重い十字架を背負っての人生だ。

 前穂高岳はパスして山頂から7時間の歩行で河童橋到着、そのまま上高地アルペンホテルの浴場で汗を流す。同ホテルは温泉ではないが展望もよく設備もきれいで立ち寄り入浴にはお勧め(500円、14時まで)。天候が変わりやすい秋に3日間とも快晴に恵まれ、「サクッと奥穂高岳登頂」も大成功。心残りは南岳−北穂−奥穂の大キレットを経由するコースを自信がなくて選択できなかった点だ。


草紅葉が始まった涸沢カール、
後方ピークは北穂高

<コースタイム>

9月23日(快晴)=JR八王子0849―松本(松本電鉄)−新島々(バス)1220上高地BT1240−1320明神池(昼食)1340−1425徳沢1435−1530横尾山荘(泊)

24日(快晴)=横尾山荘0610−0713本谷橋0730−0855涸沢ヒュッテ(コーヒータイム)0947−1110ザイテングラード取り付き(昼食)1143−1300穂高岳山荘(泊)

25日(快晴)=穂高岳山荘0610−0700奥穂高岳山頂0720−0858紀美子平0907−1022カモシカ立場1026−1110岳沢ヒュッテ跡売店1125−1310上高地・河童橋−上高地アルペンホテル(入浴)−上高地BT1440(バス)−新島々(松本電鉄)―JR松本駅−八王子