テントで泊まる鳳凰三山縦走      

1998年10月2日夜〜4日

   長沢(CL)柴勝(SL)金原、米沢、 吉田隆、吉田ま、内藤清、内藤和

 

 「お山はやっぱり晴れがいい」。こんなフレーズが思わず口をついてででくるような印象深い山行となった。それは、この日を迎えるまでのエピソードで、さらに彩りを添えてくれた。

 この週は、雨の日つづきで、おまけに台風が近づいていた。そんなとき、柴さんから「どうしようか」と、寝込みを襲う電話が1日にあった。相談の結果、中止の結論をだしたものの、目が覚めてくると「早まったかな」と思い、現地の天気予報や山小屋に連絡をとって情報収集した。

 「うーん、これはやっぱり早まった」。参加メンバーに意見を求めたら、吉田(ま)さんからは「せっかく休みをとったんだから、雨覚悟でいきましょうよ」との力強いお言葉。金原さんも依存なしで、すぐ柴さんに連絡して、前言撤回、決行を確認。その結果が、現地タクシードライバーが「今シーズン最高の天気」というほど、またとない最高の山日和の山行となった。もし中止していたら、大きな後悔を残すことになったし、なによりメンバーにさぞ恨まれていたことだろう。

 いよいよ2日の夜、いつものように西友前に全員集合し、柴カーと吉田カーに分乗して午後8時45五分出発。南アルプス林道に入って、二俣でいき別れになったものの、無事、鳳凰三山の登山口、夜叉神峠の駐車場で午後11時45分合流し到着。星が降るような夜空と、ネオンがなくても歩けるほどの輝く満月が、私たちを歓迎してくれた。明日の快晴をも約束してくれていた。

 駐車場には先客が十数台。車のなかの声が漏れないことを確認して、吉田カーに8人がぎゅうぎゅうづめになっての酒盛りが始まった。これがなくては山は始まらない。午前2時まで月夜の中でわいわいと宴は続いた。

 翌朝六時起床。予想通り雲一つない快晴だ。車の中は冷蔵庫状態で、酔った勢いでそのまま寝たものだから、体の芯まで冷え切った。固まった身体をほごし、朝食をすまして、いざ出発の段になって、騒動がわき起きた。いまのいままであったはずの米沢さんの合羽がどこにもないという。全員のザックのなかを捜索する大騒動となったが、どうしても見つからない。あきらめて出発することにしたが、その合羽が、下山すると隆ちゃんカーのタイヤの影にきちんと置かれてあったのだから驚いた。おニューのゴア合羽なのだから、本人は見つかって大喜こびだが、なぞがなぞを呼ぶような不思議な事件だった。

 とにかく、この「かっぱの怪」事件に区切りをつけて、午前7時半出発。トップは北岳と同様、柴さんにお願いする。南アルプスの魅力のひとつ、樹林帯のなかを順調に登る。いろいろな種類が混じったコケのじゅうたんは、森全体の空気を緑色に染め疲れや、日頃のストレスまでも吸い取ってくれるようだ。

 午前9時、夜叉神峠小屋着。白峰三山が眼前に現れた。どっしりした山容は、さすがだ。15分ほど景色を楽しんでから出発。山火事跡では、しばらく視界が開ける。

 道はとても整備され歩きやすく、それほどの急登もなかったためか順調にすすみ、午後2時25分に南小室小屋に到着。樹林に囲まれた、とても落ち着けるキャンプ地だ。こんこんと湧く水は、手を少しふれているだけで痛くなるほどに冷たく、最高に美味。もちろん好きなだけ無料で使えるのでありがたい。

 テントを設営し終わるとすぐに、ご苦労さんの酒盛りになる。食担の金原さんの料理には、いつもながらメンバー全員が大満足で、それに加えて今回は、内藤さが持参した、魚の端物の粕漬けが絶品であった。なかかな手に入らないと内藤さんはいっていたが、それも納得できる。下界にいるときよりも贅沢な食事だ。米沢さんのアイデアで、粕漬けの粕まで焼いて食したのには、持参した内藤さんもびっくり。が、食べてみると、これが香ばしく、つまみとしてなかなかのもので酒がいっそう進むはめに。

 宴もたけなわで、最高に盛り上がっていたころ、となりのテントから「うるさい」の声がかかった。これをきっかけに、長かった宴もお開きにした。しかし夜の7時半のことで、こんなに早い時間に抗議されるとは、みんな納得できかねる様子だったが。

 午前3時20分に起床。きょうは長丁場だ。おじやの朝食をしっかりととりテントを撤収し、午前5時15分の出発となった。暗いうちの撤収は手間取る。

 5時40分、日の出とともにシラビソノの森がオレンジに染まった。富士山も墨絵のようにくっきりと浮かびあがった。このころから急登となり、内藤夫人の遅れが目立つようになる。が、なんとかがんばってついてくる。7時20分、薬師岳小屋を通過し、その10分後、薬師岳山頂に立つ。白い砂、岩とハイ松の配置は日本庭園を思わせ、この世のものとは思えないほどの幻想的な雰囲気を醸し出している。自然が作り出した芸術だ。

 左に白峰三山、右に富士を従えたぜいたくな山行に、金原さんは、「あらためて南アルプスにほれた」という。8月にいったばかりの北岳だけに、親しみもひとしおだ。柴さんは、どうも体調がよくなさそうで、いつものだじゃれがでてこない。1時間弱で、鳳凰三山の最高峰、観音岳2840bに到着。そこから2時間ほどで地蔵岳だ。時間が予定よりかなりオーバーし、検討の末オベリスクは断念する。高嶺で卵、餅入りラーメンの昼食とする。このために南小室小屋から内藤さんと私で水を計6gをポッカした。内藤さんは、なかなか元気だ。

 11時45分出発。「さあー、あとは下りだけだからガンバロー」とのかけ声はよかったが、すぐにきつい登り返しとなった。地図をよく見ていなっかたことが、ばれてしまった。白鳳峠から広河原方向に下り、ガレ場を通過して樹林帯に入ると、階段あり、くさりありの厳しい下りに一変した。階段がところどころ壊れていて、けっこう荒れている。しりもちをつきながら、ようやくどやどやと広河原ロッジに到着したのは、もう午後5時をまわっていた。

 最終バスも出てしまった。同じようにバスに乗り遅れたのであろう十数人の登山者が、ロッジ前でタクシーを待っていた。それに見習って、タクシー会社に電話をしようとしていると、登山者の一人が、「あすこの若者グループは三人だから、同乗させてもらったら」とのアドバイスをくれた。そこへちょうどタクシーが到着し、交渉を開始したが、すぐにokしてくれた。彼らは甲府までなので、吉田さんと私二人が夜叉神の駐車場まで便乗させてもらった。彼らは千円でいいといってたが、そこは大人の対応で三千円払う。

 夜叉人峠の駐車場から広河原まで車を飛ばしたが、それでももどったのは午後六時で、どっぷりと日が暮れてしまった。それでもめげずに北岳のときに泊まった桃の木温泉でじゃぶんとつかり、元気に帰途についた。

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