自然とは本当に不思議だ。別に人間のためにできている訳でもないだろうが、息も絶え絶えの急登には、可憐な花たちがそっと寄り添い応援してくれることが多い。北岳の草すべりも、そんな急登の一つ。今年の夏合宿で訪れたときにも、色とりどりの高山植物が咲き誇り、私たちのパーティーを登頂に導いてくれた(下に一部を紹介)。
今回の夏合宿の山行は、私にとってとても意義深いものとなった。なぜならば、3年前の飲み会の席で、北岳に一人でも登りたいという新人の女性会員に、「分かった連れて行くよ。それができないようなら会の存在意義はない」などと、酔った勢いで大見得をきってしまったものの、その約束をずっと果たせずにいたからだ。新人会員とはいえ当時、72歳、しかも大病で胃などを摘出している方だ。
あれから3年、南アルプスの集中登山という好機を得て、今でも登る意志はあるかと彼女に打診。「あります。登りたい」という力強い返事をもらった。正直、ものすごい不安はあった。反面、それまで心に刺さっていた棘が抜け落ち、すっきりした心持ちとなった。
計画は彼女の体力を最大限優先。通行止めで夜叉神峠から入れないという不測の事態はあったものの、朝、特急電車で新宿を出発し、タクシーで広河原へ。そこから白根御池小屋泊、北岳登頂後、肩ノ小屋で2泊目。広河原へ下山というものだった。ところが台風11号接近で、肩ノ小屋をスルーし、白根御池小屋泊に変更。2日目の行動が7時間に及ぶことになった。
山行は9人パーティーとなったが、私が彼女に付き添い、残りはサブリーダーに任せた。彼女も相当の不安があっただろうが、歩みこそ少々ゆっくり目だったものの、堅実な歩きで、他のメンバーとの差はほとんど生まれなかった。2日目の7時間の行動も、あの草すべりの急坂を含め問題なくクリアー。北岳山頂では他のメンバーと涙を流して喜んでいる様子を見て、こちらもうるうるしてしまった。
彼女も感動しただろうが、積年の思いを無事果たせさていただいた私も心から彼女に感謝したい。もし打診した段階で「もう登れない」といわれていたら、心に刺さったあの棘は、一生抜けることはなかっただろう。
今回のメンバーは、彼女をはじめ、疲れを見せた人をいたわり、お互い励まし合って歩いていた。いいメンバーといっしょに登れたことにも感謝したい。みなさん、本当にお疲れさまでした。
出会った花たちの一部を紹介。









