山歩き

「100の頂きには100のドラマがある」 百高山への道・南ア2座登頂

どんなピークを目指すにせよ、その過程にはドラマがある、と思う。
百高山2山の登頂を目指した今回(8月13~15日)も、小さいけれど、そんなドラマが、いくつかあった。

一つひとつは、とても小さなドラマだ。山からおりればすぐに忘れてしまいそうな、自分の一生にとってみても、ほんのささやかな出来事かもしれない。でも、そんな小さなドラマの積み重ねが、ひょっとすると人生そのものなのかもしれない、などと思ったりもする。

鋸岳に向かう我々に、たまたま外に出ていた(本当は登山者の様子を見ていたのかも)大平(おおだいら)山荘のおかみさんが「角兵衛沢の出合は分かりづらいから気をつけて」「きのう雨が結構降ったから、渡渉には気をつけなさい」「(山の)経験はあるんでしょ?」などと心配そうに声をかけてくれた。数分にも満たない会話だったけれども、心がぽっと温まる。

そして、そんなおかみさんに報告がしたくって、下山後に立ち寄った大平山荘。その後、ちょうどやってきた北沢峠行バスのドライバーとの出会いも、楽しいものだった。終点、北沢峠まで歩けば30分近く、バスなら5分。「乗せてくれますか?」、ちょっとためらいの表情を見せたけれども、「ああ、いいよ」と言ってくれた。歩いて行けないわけではないけれど、角度のきつい八丁坂を登り終えた身にとって、これはとてもありがたい。「鋸岳?」「そうです。誰とも会わなかったですよ」「そうだろうね」。「ひざが笑っているの?」「いや、泣いてます」。こんな二言三言の会話だったけれども、ドライバーのいたわりの心が伝わってきた。

翌日、アサヨ峰を登り、仙流荘に戻るバスのドライバーも、なんとこの時と同じドライバーだった。「臨時を出す場合は、呼びにいってあげるよ」と、こもれび山荘で休憩する我々に、そんな声もかけてくれた。車中の観光案内も絶妙。「静かにしているので、お休みになって下さい」と言っておきながら、鋸岳の「鹿窓」、林道に舞う美しい蝶「アサギマダラ」、「仏像構造線」と言われる断層をしっかり解説してくれた。このバス、長野県側に下る伊那市(旧長谷村)営で、バスも最新のものになっていたようだ。

そんな人とのふれあいの中で、今回は75座目の南アルプス・鋸岳(2685m、94番目)と76座目のアサヨ峰(2799m、65番目)を無事に登らせてもらうことができたのだった。

山行では、まず鋸岳の核心部は戸台川の渡渉だった。台風11号の影響に加え、前日の雨による増水で、けっこうてこずった。一時は近くで幕営し、明朝、水量が減れば渡渉しようかとも考えたが、河原の石を投げ込む「土木工事」を1時間ほどかけて実施。その結果、みごと渡渉に成功。当然、裸足になったので、水がいたいほど冷たい! さらに幕営予定地の「大岩下の岩小屋」が発見できず、途中の沢で水を汲んだ上で、落石の危険が少ないと思えた角兵衛沢の登山道上、標高2200m近辺で幕営。翌日、デポしたまま登頂を果たした。撤収時、雨だった。

アサヨ峰へは、朝、青空が広がったためルンルン気分で出発。ところが樹林帯を抜けると殴りつけるような風雨となった。よろけるぐらいの風で、岩稜帯の通過は少し緊張を強いられた。

【参考コースタイム】
8/12(火)自宅前18:40~中央道~22:50仙流荘隣接の駐車場(車中泊)
8/13(水)仙流荘前(臨時バス)5:40~6:35北沢峠~(バス)大平山荘6:45~7:50丹渓荘跡8:10~戸台川渡渉11:20~角兵衛沢登山口11:40~12:201合目12:30~13:50角兵衛沢岩小屋前~(上部偵察後)15:10幕営(2200m)
8/14(木)幕営地5:20~6:55鋸岳頂上(第一高点)7:04~7:20コル~8:15テン場~9:20樹林帯~11:08戸台川渡渉~休憩12:07~12:55丹渓荘跡13:02~14:50大平山荘15:10~15:25北沢峠・長衛荘テン場(幕営)
8/15(金)長衛荘(テン場)5:22~7:15栗沢山~8:15アサヨ峰~9:15栗沢山~10:40長衛荘
北沢峠(臨時バス)12:40~13:35仙流荘(入湯後帰京)

IMG_5329角兵衛沢の標識。渡渉が大変だった
IMG_5330戸台川の渡渉点。石を投げこみ足をすくわれないように土木工事を行った
IMG_5335鋸岳1合目
IMG_5334角兵衛沢への登山口
IMG_5347標高2200mほどで幕営。畳1畳ほどの広さしかない
IMG_5350ちょっとぜいたくな夕食。ニンニクをこんがり炒めてからステーキを焼く
IMG_5362登山道の脇に咲くトウヤクリンドウ(蕾)
IMG_5378険悪な角兵衛沢。登るのも下るのも大変
IMG_5409南アルプスらしいシラビソの林に霧が煙る
IMG_5422長衛荘の前に咲くヤナギラン?
IMG_5433風雨の中の登頂。アサヨ峰

 

 

 

 

 

 

 

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